公共事業の誘致看板コレクション

公共事業を誘致する看板が好きだ。公共事業の誘致看板と言われてもピンと来ないと思いますが、例えばこういうもの。

special_kanban_wakayama_800_c南海和歌山市駅前にて(2012.4.1)
和歌山と淡路島の間に大きな橋が描かれている。紀伊水道の真上に架橋してしまう計画があることに驚愕した。明石海峡大橋も真っ青のワープ感だ。

道端や線路の傍にデーンと立つこれらの看板。そばを通り掛かる地元の人はすっかり見慣れたのか誰も見向きもしないが、よそ者からすれば「こんな場所にこんな計画があるのか」と、想像力を刺激される。それに地図に載っていない計画が、目に見える形で置いてあることも見応えがあって良い。

知らない町の地元事情を覗き見してしまうようなこの感じ。いつの間にやらすっかり見つけるのが楽しみになってしまった。その町の選挙権も無いのに撮り集めている。

ところでネット上では、公共事業の誘致看板を専門に扱ったサイトがどうも見当たらない。マルフクやキリストとか、マニアックな看板を集めたページはたくさんあるのに…。せっかくなので自分でやることにした。
(なお、ここでは建設の是非については言及しません)

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南伊豆町にて(2015.9.2)
伊豆半島南端・石廊崎へドライブしてきた帰り道に発見。伊豆半島南部は高速道路の空白地帯。最南端の町としては、一日も早い実現を目指すのは当然のことかもしれない。

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高松駅にて(2010.4.22)
画質が悪くてすみません。バースデイきっぷ(誕生日月にJR四国管内の特急列車が乗り放題)で四国旅行中、早朝の高松駅で発見。線路幅の違う新幹線と在来線を直通することのできる、夢のフリーゲージトレインだ。

2016年現在、高松~岡山間は快速マリンライナーが運行されている。快速と言っても時速130キロで、展望グリーン車も連結されている。ただ、大阪方面に向かうには岡山で山陽新幹線に乗り換える必要がある。いつの日かフリーゲージトレイン化されれば、高松駅のホームから新大阪行の新幹線が出るのだろう。にわかに信じられない光景だし夢がある。

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予土線にて。どこの駅か失念(2010.4.24)
右のダム撤去看板も気になるが、今回取り上げたいのは左のもの。これは誘致看板というか現状維持目的だ。予土線は、高知県の若井駅から愛媛県の北宇和島駅までを四万十川の流れに沿って結ぶローカル線。0系新幹線風の車両が最近走り出した路線と言った方がピンと来る人も多いと思う。

予土線は過疎地域を走っているため利用者数が少ない。みんなで利用と言っても「みんな」の絶対数が少ないことは考えさせられる。

JR四国は近年になって、先ほどの「0系新幹線風」の車両のように、観光列車に力を入れ始めている。とてもいい試みだと思う。遠く離れた地域から「この列車に乗りたい」と思って探訪してくれる人を生み出したのは感慨深い。

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ちなみにこの時は、貨車にビニール屋根と椅子を付けただけのトロッコで全線乗り通した。四万十川沿いの景色が最高だった。2016年現在は「しまんトロッコ」としてリニューアルされお洒落に生まれ変わっている。JR四国が本気を出している。

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福知山線・谷川駅前にて(2012.4.22)
友達と兵庫県の山奥にある神鍋へドライブに行った帰り道に発見。運転中にたくさん見つけて思わず車を停めた。駅前ロータリーに何枚も設置されている。ちなみに右下にチラっと写り込んでいるオブジェは恐竜。2006年にこの町で化石が出てきたらしい。

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上と同じタイプの説明看板。福知山線は国鉄民営化の直前に電化・複線化のため一部区間で路線の移設を行った経緯(※1)がある。ルートについて強調されているのはその経緯あってのことだろう。

(※1) 1986年、生瀬駅~道場駅間で大規模なルート変更が実施され、武庫川渓谷沿いを走る旧ルートがトンネルで一気に貫通する新線に切り替わった。その後、渓谷沿いの旧線跡は鉄橋やトンネルが残り、関西で有名なハイキングコースとなっていた(本当は立入禁止だが、JRは黙認していた)。今年、正式に開放される予定。(→参考:旧国鉄福知山線の廃線跡、ハイキングコースに 秋に開放 朝日新聞

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「みんなで乗って~」はこの手の看板で頻出する文言だ。なお、この看板のある谷川駅は丹波市(旧・山南町 さんなんちょう)に存在する。「谷川町」や「谷川市」ってのはそもそも無いんだね。ちなみにこの三枚とも、駅前ロータリーに設置されていた。熱意を感じる。

コメント

  1. デイリーポータルZから来ましたが、このエントリがすごいと思いました。
    目の付け所というのか関心のベクトルが天才的で膝を打つ思いです。
    誘致看板がものすごく魅力的に見えてきました。

    • さい より:

      > おがわしゅうさま
      斉藤です。飛行機からたどってご覧いただきありがとうございます。お褒めの言葉恐縮です。
      誘致看板の魅力に共感いただけて嬉しいです!引き続き収集していきます。

  2. 木口 より:

    デイリーポータル経由で拝読しました。
    やってくれる方がいらっしゃって嬉しいです。
    近所には『国からもらったお宝道路』という看板があって、その感謝の方向性が珍しいので他にないかなあと思っております。

    • さい より:

      > 木口さま
      斉藤です。コメントありがとうございます!
      こちらこそ反応いただき嬉しいです。
      その露骨な看板すごいですね。いつか叩かれて撤去されかねないので、記録しておくべきですね。

  3. じょ より:

    デイリーからきました。
    高の原駅の写真がありますが、この看板に向かって右側にも、「けいはんな線の高の原延伸早期実現を」という看板があります。リニアの看板は比較的最近できたのですが、考えてみれば、何でもかんでもわが村へと言いたいみたいで面白いですね。

    • さい より:

      > じょさま
      デイリーからご覧いただきありがとうございます。
      高の原と言えばけいはんな新線の最終目的地ですね。地元では看板も出てるのですね!情報ありがとうございます。
      鉄道の延伸計画がある場所を狙って訪れると見つけやすそうですね。

      奈良のリニア誘致活動の過熱ぶりにはびっくりしています。誘致のために鹿が踊ってるって、知らない人に説明しても通じないですよね。